今回の三面川岩井又沢釣行は、“飛び出す絵本”である。源流に憧れ、雑誌を読み耽る様になってから、この沢をバックに大岩魚を手にしてニンマリする源流マンの写真を幾度となく見てきたからだ。


左から鶴見さん(初対面)、福ちゃん(渓道楽)、大串さん(2nd釣行)、高野さん(渓道楽)。今回の仲間!

 今回の源流行で、オイラには一つ目的があった。岩井又F1・・・無念にもこの地で他界された故斉藤さんに線香を手向けることである。大飯を喰らい、重荷を背負って、グイグイ歩く斉藤さんは、スーパーマンそのものだった。

 右の写真がF1手前の渡渉ポイント。右岸の砂場に線香を焚き、しばし手を合わせた。この穏やかな流れから悲劇は想像できない。しかし、油断できないのが源流。大雨で濁流を流れる大岩同士がぶつかり火花が見えることあるとか・・・

 実がオイラたちも、この後、この渓の洗礼を受けることになるのだが、三面川本流、岩井又を徒渉し、ブナの森を歩くこのあたりまでは、「尺上イワナ連発で宴会だ!」とルンルンオヤジよろしく、足取りも軽かったのである。


 真っ暗な車止めで集合して乾杯の後、朝から猛暑の山道を進む。数年前にこの沢に入った高野さんの記憶と鉈目が頼りだ。

 朝日連峰の渓は本当にブナの森が美しい。白い幹、透けるような緑の葉、空の青・・・しかし、今回は“猛暑”と言う厄介者が終始まとわりつく。これに追い打ちをかけたのが、途中から“踏み跡がほぼない”と言う状況。
 「F2上のテン場までここから3時間くらいかなぁ・・・」、鶴見さんがGPSを見ると「そんなに進んでいないかな?」とまぁ、こんな会話が何度か繰り返された。渓流沿いに進んでいる感覚よりも、「これが踏み跡じゃないですか?」と言いながら、道を探してアップダウンしている方が長いくらいなんだから、そうそう軽快に進んでいる訳もないのである(笑)
 みんな言葉にはしなかったけど、発狂寸前じゃなかったかな?オイラも、川の水に浸って身体を冷やしたくて、一旦、沢まで降りた。沢が流れる岩壁を直登して仲間の合流する羽目になってしまったけど・・・

 「ここをテン場にしよう」とF2手前の河原に陣取り、高野さんがエサで釣り上げてくれたイワナをイワナワンタン揚げにして頂き宴会スタート。仲間が作ってくれる宴会料理をビールと一緒に頂く至福の時。源流の麻薬である(笑)

明けて二日目。左岸に取り付き、F2を超え、沢に降り立つ。
しばらく、渋い釣りを続けると、ドっカーンと渓が開ける。
「コレコレ、どこかで見た景色!」と思って、テンカラを振るが、イワナの喰いは立たない。
雨も降ってきたので、ここでランチにして引き返すことにする。
引き返したのは、イワナが釣れないからである。
しかし、エサも毛鉤もフライも喰わなかったイワナに、この後感謝することになる。


今回、オイラのテンカラに喰らいついてくれたイワナ。
この毛鉤、大ノ内優渓さんから頂いた南阿蘇鉄道復興祈念熊の毛・雉の羽を使ったものです。
「試し釣りしてみて下さい」と言って頂いた大ノ内さんに感謝です。


この写真は、ビールが嬉しそうに並んでいる1枚目の写真と同じ場所です。
「いいから、早く上がれ!」と大串さんの怒号が飛びました。
少し前、パッキングしている鶴見さんに「何してるんですか?」と真顔で聞いたオイラ。
ほんの数分でこの状態でした。
手当たり次第に荷物を高台に揚げ、最後に、タープと小物を取りまとめ、緊急避難しました。
雨は土砂降り、一向に止む気配はありません。ロストした飯盒は今回の教訓。
“たら・れば”は禁物ですが、イワナが釣れて、「もう少し上流まで行ってみよう」と
誰かが言っていたら、途中で5分休憩していたら・・・荷物ごと流されていたと思います。

 岩井又2日目は山中にビバークとなりました。大串さんが作ってくれたドライカレーが猛烈に美味しかったです。
 大雨の直前、イワナは・・・@喰い貯めするから喰いが立つ、A大雨に備え大岩の下に潜るから喰わない。オイラは今までずっと@だったけど、仲間の中にはAだと言う人もいて、今回はまさにA。それ故、あの場所で折り返し、九死に一生を得たのである。喰わないイワナに感謝。
 年季の入ったオイラのタープからの雨漏りも、シートの下が雨の通り道になってウォーターベッドになったことも、首筋をブヨに喰われたことも、目が覚めて晴れ間を見たら、全てチャラです(そんなことはない!(笑))


増水した岩井又沢をザイル振り子で徒渉し、三面川本流をザイル渡渉して帰路を目指します。
このザイル、往路、大串さんの判断で、増水時に備えfixしたもの。
その必要すら感じていなかったオイラであった。経験者の判断に感謝。


全員が安全に徒渉し終えると、自然とハイタッチ。
ケガなく安全に帰還出来たからこそ言える、“イイ経験になった”と言う言葉。
三日間共に過ごし、檄を飛ばし、大きな声を出してくれた仲間に心から感謝。
三面川、岩井又沢、是非また行きたい渓になりました。

渓道楽:高野さんの臨場感溢れる釣行記はこちら

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