渓歩き生理学



 この日は土曜日の昼下がり。
オイラは午前中仕事だったので、スーツ姿でJR藤枝駅を降りたのであるが、そこまでみっちゃんにオイラのレオーネで迎えに来てもらう・・・というVIP的出発となった。途中島田のコンビニで短パンTシャツに着替え、ようやく人心地がつく。

 今回の山遊び(この記事から今までの“釣行記”から“山遊伝”にタイトルを変える事にした。「こっちの方が合っているかな」って思ったからって言うだけなんだけど・・・)は釣以外の明確な目的がある。
イワナもいいが、山菜もイイのだ!

 車止めで準備をしていると、番人のオッチャンと訪問者が何やら話しをしている。渓へのルートだ。「こうやって情報が拡散していくんだ!」と少々鼻息を荒くしながら歩き始める。
 
 本日オイラたちを初めて出迎えてくれた山の主は、敢えなくみっちゃんに取り押さえられたのである・・・
 
 歩き出したのは16:30頃。途中、山を降りてくる先行パーティーとすれ違う。実は、入山前、オイラたちよりも一足先に、同じ目的で、このパーティーが入っていた。すれ違い様の表情は無言で「イッヒッヒ」と言っているとしか思えない。イイ思いをしたのだろう。彼らが渓泊まりなら、そのテン場まで歩こうと思ったが、行き交ってしまったため、天然林の林床にテン場を設ける。

 このテン場、以前にも使ったことがあるのだが、どうもオイラたち以外には余り使われないらしい。
 すぐ横には水場、焚き火に使う豊富な倒木と朽木、鬱蒼とした天然林、静寂な中を清冽な渓の流れる音が響く・・・唯一つ、サイトの真ん中に立ち木があることを除けば、全く申し分ない。

 このテン場で、今回みっちゃんが、ご馳走を用意してくれた。民宿ふるさと提供のものであるが、一般ピープルでは滅多に手に入らない鹿肉の薫煙である。
 コレをメインディッシュに、お好み焼き、野菜炒め他、賞味期限切れ自宅冷蔵庫在庫をつまみに酒が進む。21:30には二人ともシュラフへ・・・
 快適な目覚めの翌朝04:00。
焚き火を起こし、氷結レモンをグビッとやる・・・もはやこれは山の朝の日課だ。
 前にも書いたかもしれないが、氷結は焼酎ベースではなく、ウォッカベースなのである。朝の目覚めには最高だ!
 みっちゃんも起きてきて、朝飯を食べ、何だかんだ出発の準備が済んだのは、06:00。

 途中、平仮名の「ん」を反対から見たような気が目に飛び込んでくる。何とも不思議な木の伸び方であるが、これもまた自然。自然の造形美に「?」を幾つも浮かべながら、青空から日が差す稜線に向かって足を勧める。

 この時点で右膝の靭帯を痛めていた。
「歩く」と言う行為は、脳から骨格筋を収縮せよ!と言う命令が出て、大腿四頭筋を収縮させ、膝を上げ・・・というシステムになっているらしい。靭帯を痛めて歩くに当たって、「斜面があるから歩く」と言う意識でなく。「膝を上げる」と言う意識に切り替えてみた。しばらくは子ども騙しで痛みが引いたようにも思ったが、痛いものはヤッパリ痛い。とは言え、この当たりの歩き方と意識の問題は考えたらオモシロいんじゃないか?などと考えながら、高度を稼ぐ。


<可憐に咲くイワカガミ>




<可憐に咲くキバナシャクナゲ。毒性があり鹿も食べないようだ>

 ひたすら登り続け、目的の場所でのランチタイム。足の踏み場もないほどに自生する行者ニンニクが今回の目的。

 結構体力も消耗したので、10:30にブランチでラーメン、14:30にブランチでうなぎ茶漬けを食べ山を降りる。
 
 痛めた靭帯は登りよりも下りの方が負担がかかる。腰に巻いていたゴムチューブを膝に巻き、ゆっくりと降りることにする。


<至福のとき>



稜線を歩いてみた。東西南北を自在に走る尾根の向こうに
富士山が見えた。感激した。

そして最後に山の主が見送ってくれた。
サンダーバード発進!


結局、竿は一度も出さなかったが、今までで
一番楽しい山歩きにだった。
釣行記ではない、山遊伝を改め綴ろう。
この楽しさを、子どもたちに伝えていきたい。
いつかは一緒にここに来たい。
そう思うには十分すぎるほど、天気にも、仲間にも、自然にも
恵まれた2日間だった。


みっちゃんの日記
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