白い夜の不思木


 5月ともなれば、全国各地で渓流釣り・山釣りが解禁となり、豪雪の中をラッセルしイワナの顔を拝む人、芽吹いた山菜のテンプラを肴に新緑酒を決め込む人・・・人間も動物も植物も動き出すのが5月のような気がする。

 そんな中、地元釣り友だちのみっちゃんと“山菜でイッパイ、あわよくばイワナ!”という山登りに出かけた。
出発は土曜日の昼過ぎ。途中トレッキングシューズを忘れ、一度引き返しつつも、15:00頃には車止めに到着。
一泊二日とは思えない重量感のあるザックを担いで歩き出す。

 道々生えているウドやタラの芽を「ビールのつまみに!」と摘みながら、ボチボチ進んでいく。

山肌には雪が残る・・・

贅沢と言えば贅沢である!
 時計の針は17:00を回った。
家を出るとき、袋ラーメン1つ食べただけだったのが災いしたようで、シャリバテ気味であった。もう1ステップ上まで・・・と予定していたが、早々に断念し、渓流沿いにテン場を構える。
 前回のキャンプで「野営には野菜」と悟ったので、野菜をメニューの中心に考え、タラとウドのテンプラ、みっちゃんのたこ焼き、餃子、カツオに舌鼓を打ちつつ、ナンちゃって渓語りに花が咲く。

 大きなタープの下で、ゆったりと構えられるこの気分・・・何とも言えない贅沢さがある。疲れた体に染み渡るお酒とそれを流すような渓流の音。空を見れば、山間からお月さんがこっちを見ている。

新緑と煙の向こうにお月さん


焚き火は心とお酒の友



水が滴り続ける“不思木”

 帳が下りた空に、明るいお月さんは、暗くなるはずの空を白く染めていた。

 テン場に「切ったら水が出続ける木」があった(写真)。何の木か分からないが、ほぼ24時間こば口から水が滴り落ちていた。コッフェル1杯なら3分あれば溜まるほど滔滔と水が溢れてくる。「これなら水場のないテン場でも大丈夫かな?」などと言いながら“不思木”と名づけた。

 メンバーと行くと、はじめに沈する2人だけに、シュラフに潜り込むのは早い。
 真ん丸お月様と白い空、滴る水、サーッと続く渓流の流れ、パチパチと弾ける焚き火が何よりの肴と子守唄。明日の歩きを想定し、ぐっすり眠る。幸い、それほど寒くなく、十分な睡眠が取れた。
 

ヤマイワカガミ
(ピンク色のはイワカガミと言うんだそうだ)


アカヤシオが満開
(白いのはシロヤシオ。上向きに花が咲くんだそうだ)

 快晴の翌朝、焚き火を燻らし、オイラは氷結レモン、みっちゃんはドリップコーヒーで体を元気にする。
 段々と雲が増え、泣きそうな空を見ながら、必要最小限の荷物を持って標高をあげていく。ピークに近くなると小雨交じりとなり、じっとしていると寒くて仕方ない。

 と上から人影が・・・
「ナンだぁ、とんでもないことしてやがるなぁ・・・」とその名人は降りてきた。家は近所なのに、その近所でバッタリ会うことはないのだが、どういう訳か、人里離れた山の上でバッタリ。出会いはこういうものだろうか?

 予期せぬ嬉しい偶然に下山の足も速まる。気の置けない人と話しながら過ぎる時間は早い。あっという間に昼時だった。ワンカップを頂きながらのランチタイムだ。

マッタリランチタイム

 山の話は尽きないが、ここで名人と別れ、強欲なオイラたちは釣りに転向する。
しかし、巨岩落ち込みの連続する流れからイワナの声は聞こえなかった。エサでもテンカラでも音沙汰なし。
とは言え、山の恵みに感謝しながら来年の再訪を約束し、ラーメンを啜ってオシマイ。

<日  程>平成17年5月21日(土)〜22日(日)
<メンバー>みっちゃん
<エ  サ>カワムシ:×、ミミズ:×、テンカラ:×


同行した“みっちゃんの釣行記”


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