【年月日】2004年4月10日(土)〜11日(日)
【気 温】暖かくて大変よろしい
【天 候】終始快晴
【写真:ヤマツツジ】
葉の輝きが少ない山肌には紅一点である
今年はまだアマゴの顔も、イワナの顔も見ていない。
それもそのはず、3月の自主解禁釣行では近年この渓では希に見る
豪雪のため、アプローチを断念したのである。
以来、月を跨ぎ、山渓から遠ざかって久しい。
4月も山渓に行ける日は限られていたため、その日の同行を仲間に
打診してみるが、仕事やプライベートで都合がつかず、結局、
オイラ1人だけとなった。
何だかチョット寂しかったが、よく考えて見れば、
10年以上渓流釣をしてきたが、
「一人での渓泊りは経験ないなぁ・・・」と言うことを
今更のように思い出し、「ならば、イッチョ、行ってみるか?!」と
一人で盛り上がったのであった。
地元の先輩釣師であるバカなが隊隊長に山道具を借りて、金曜日の夜から
出掛けようと思ったのだが、急に土曜日に仕事が入ったため、何とか
午前中で終わるように段取りをして、お昼過ぎから車を走らせた。
この土曜日お昼出発は他ならぬ“バカなが隊スタイル”=テン場に夕方着いて
飲むことから始まる渓泊りライフなのである。
ともあれ、お天道さんが燦燦とした土曜日の昼に市街地から林道入口への
アスファルトをひた走る。
幸い車止めには誰もいない・・・というか、ちょうど引き返した車がいたようだが、
山菜採りか山の景色を見るドライブかだと思うが、崩落した林道を見て
返っていったのだろう・・・
ご機嫌で歩き始める。
そうそう、いつもロープが掛けてある岩壁を初めてフリーで登ったが、
登り切る直前、足元の岩が崩れ落ち、ヤパかった。
本当に泣きそうになったので、次回からはもっと安全なルートに挑むことにする。
【写真:テン場の様子】
単独だったので自在鉤&飯盒で瀬畑さんスタイルを真似てみた。
そうそう、今回は自分なりの目的があったのである。
いつも使うテン場は写真のテン場なのであるが、どうもこのテン場は
快適過ぎるせいか怠け癖がついてしまっている気がするので、
さらに上流部にいいテン場を探そうと思っていたのである。
とは言え、「明日探そう!」と、今夜のテン場はここに決め、時間も時間だったので
早くも自堕落モードに突入してしまうのである。
寝床を作り、少々時間があったため、テン場前で夕餉のイワナを所望して
竿を出す。いつもの通り餌は持参せず現地調達。少しの時間でキンパク丼が出来る。
相変らず豊かな渓である。
ほどなく、可愛いヤマトが掛かるが、さすがにリリース。食い気の立つ夕間詰め
ではあったが、針に掛かるヤマトはどれも小ぶり。
それでもと1尾だけ頂戴し、刺し身と素揚げの唐揚にして頂く。
今回の刺し身は黒部の職漁師は釣った岩魚を濡らさずそのまま捌く。その刺し身の方が
数倍ウマイ!というビデオをこれまたバカなが隊に借りて見ていたので、
その通り実践する。気持ち甘みが強く感じられ、評判通りのウマさだったが、
環境がそう思わせるのかもしれない・・・と思いつつ、酒を煽る。
大勢のときはご馳走を作るが一人のときは質素でも、十分なのである。
焚き火と星空と水の流れる音をツマミに酔いが回っていく。
地球の動きでさっきとは違って見える星空を眺めつつ、家族のことを考えてしまう
のはオイラの環境が変わったからなんだなぁ・・・と何だか妙に納得する頃には、
持って来た芋焼酎がなくなりかけていた。
【写真:明けて朝のテン場】
顔が腫れぼったいのはいつものことです(=_-;)
今回は名古屋の駅前アルプスで購入したモンベルのダウンインナーが渓デビュー
なのであるが、お陰で1度も目が覚めることなく、快適な夜を過ごすことが出来た。
もともとそんなに寄る冷え込んだわけではなかったが、目が覚めた瞬間「寝坊だ!」と
思って時計を見ると丁度05:00だった。気持ち重たい頭を持ち上げつつ、
丁度いいと目を覚まし、最近渓ではオキマリとなった寝覚めの氷結サワー(レモン)
を煽る。
山の朝の空気の流れが何とも言えず気持ちイイ。
久しぶりの飯盒炊きのご飯も美味しく炊け、腹を満たした所で、ひと寝入り・・・と
行きたい所だが、今日は真面目に遡行して、1つ上の仙道を登って林道上がろうと
決めていたので、片付をして、出発する。
考えて見れば、このテン場も随分とお世話になった。
オイラにとっては、たくさんの仲間と楽しい時間と美味しい食事を提供し続けて
くれた場所である。
その分、他の釣り人よりも手前味噌な思い入れは強い。
【写真:デポされた釣&泊り道具】
〜ご本人、次回来たときには持って帰って下さい〜
快適過ぎるこのテン場には昨シーズンから写真の通り、
【写真:チャーミングなヤマト】
水量はやや少なく、石には苔が付いてる所もある。
水が動いていないせいか、魚の動きも今一つのような気がする。
食いも針掛かりも浅い。出てくる魚もこの渓にしては小さ目である。
いつも思うことなのだが、渇水だったり水量が少ないときには大物の出が
今一つな事が多い。大物は一体どこにいるんだろうか?一番、集餌率の
いい場所だと思うのだが、水の動きが少ないときは、餌も流れてこないので、
それ前までに食い貯めして、流れの底にへばり付いているのだろうか?
ともあれ、魚信も上がってくる魚体も小さ目に終始し、最高8寸強だった。
しかし、今日は「目指すは上流!」なため、グイグイ釣り上がる。
絡まった天井糸の解れを取ろうと思って、リリアンを持ったら抜けてしまった(-0-)。
これで餌竿はオジャンなので、4.5mの“もともと餌竿だがテンカラ竿にしていた竿”を
本来の餌竿として使うようにしたが、遡行のスピードを考え、途中からテンカラ一本に
絞る。
2003渓流夏号を見ながら巻いた逆さ毛鉤を打ちながら釣り上がる。
ようやく小さな落ち込みから8寸のヤマトが針掛かりをしてくれた。
沈めた毛鉤を食ったのであるが、日が当たっている落ち込みではライズも見られた。
【写真:3b弱はあるであろう木の根】
多分、山肌が削られて落ちてきたと思うのだが、巨大な根を張っていただろう大木が
流れの上にかかっている。
これだから自然って言うのは面白い。予測できない。何が起こるか分らない。
そういうシーンで、自分の身にも何が起こるか分らないのが、イイのである。
何てことを言っていたら、1bくらいの小滝から落ちた。
こういうのを「魔が差した」というのだろうか?
あるはずの岩盤がなかったのか、岩盤に足を掛けた瞬間に滑ったのかよく分らないが、
気が付いたら流れの中に埋もれていた。
意識して下流部を見ると、さらに大きな深み&落ち込みになっている。
とは言え、思ったより冷静に状況を把握でき、脚はつくし、足掛かりもある。
手放した竿が流れてくるのも分って、手に取る。
エサ箱とタモは流れてしまって拾いに行く気も起こらなかったが、
気が付けば、寒いし、右目が霞んでいるではないか。
乾燥しきっている流木はイッパツで火が起こり、体を温める。
右の瞼が切れているようだ。殴られて出血し目が霞むというボクサーの気持ちが分った。
【写真:生きていくと言うは大変なのだなぁ・・・】
出血も大した事なく、体も温まったため、遡行を続ける。
カエルって言うのは、一切水の流れのない水溜まりに卵を産む。
一枚岩の凹部がほとんどであるが、この時期、大体そうした水溜まりは
「黒胡麻入り極太ところてん」みたいなカエルの卵で溢れている。
当然、その生みの親たちもその周囲にいるのであるが、童謡で「親亀の背中に子亀を乗せて」
と言うのがあるが、今回は、カエルである。しかも、この状態である。
生きていくと言うことの意味を考えつつ上流部を目指す。
テンカラを振れども魚は姿を見せず、頭上の枝に引っ掛かった針を取ろうとして
竿ごと煽っていたら、抜けた反動で、2番手を地面に叩き付けてしまい、折れてしまった。
これで、竿が2本ともオジャンになってしまった。
一方の穂先を他方の竿で使えないか試してみたが、そんなに都合よく出来ていないらしく、
敢なく納竿。
と言うわけで、ここからは純粋に遡行に専念(せざるを得なくなってしまった)。
よくしたもので、次の瞬間から、いかにもヤマトが顔を出しそうな、ヨダレダラダラの
ポイントが連続する。
背に足を入れればヤマトが走る。
これはこれでとても贅沢な光景である。
【写真:ここが核心部入口】
数年前、初めて泊りでこの渓の核心部に挑んだとき、核心部手前の廊下で
文字通り“入れ食い”の経験を味わった。
今回も同じ思いを!と強欲釣師が意気込んでいたのだが、何せ、今日は竿がない。
不幸中の幸いか、当時入れ食いだった廊下も水流と土砂で様相が変わっていた。
ここに来るまでに泳ぎ1箇所、ハードなヘツリ1箇所。
核心部手前で泳ぎ1箇所。核心部内では3連チャンの泳ぎ。
さらにその後は、ヘツリと懸垂・・・
すでに体は冷え切っていて、全身震えている。
竿は2本オジャン、滑落して怪我もしているし、今日はツキもないから・・・と
後退的思想ばかりが頭を過ぎるので、遡行はここで中断。
今考えても、強行していたら、多分、ロクな事にはならなかっただろう。
考えてみれば、暖かいとは言え、まだ4月。水は冷たいのである。
勿体無いけど、来た道を引き返す。
途中、3人のパーティーと遭遇。
聞けばそこそこの釣果らしく、2人は昼飯後の睡眠タイム。
自分が頭上を通り過ぎてもピクリともしない。
起きている一人はカワムシ採りをしているが、こちらの声掛けが、全く予想外だったらしく、
「釣れたぁ?」「泊りなの?」と聞くオイラの顔を見て、ただポカンと口を開け、
首を横に振るだけである。
余程驚いたのだろうか?言葉が出ないのである。
オイラも普通の人間なんだけどなぁ・・・と思いつつも、会話少なく、先を急ぐ。
【写真:一枝一芽のタラノメとシイタケ】
〜この状態では採れないよなぁ〜
テン場から核心部まで釣り上がって(半分程度は遡行のみ)4時間。
核心部からテン場までフリーで歩いて1時間30分程度。
その途中にテン場候補が2箇所。水場も近い。
これだけでも今回の大きな収穫であった。
次回、仲間と来たとき、新しいテン場で、酒盛りをしよう!
帰路、仙道をゼイゼイで登り、林道をスタスタと歩く。
途中、「今が食べ頃ヨ!」とフェロモンを撒き散らしているタラノメを
頂き、家路を急ぐ。
車止めには、さっき会った日帰り3人組みの車だろう。沼津ナンバーのワンボックスと
豊橋ナンバーのオフロードが停まっていた。
近所の釣道具屋で餌竿のリリアンを補修し、テンカラ竿の2番手があるか聞くが、
10年以上前の竿なので対応できず、諦めざるを得ない。
でも、考えてみれば、この竿は、大学時代、友だちとバーベキューをやったとき、
拾った竿であり、穂先だけ買い直して餌竿として使ったのである。
オイラの四万十川での渓流デビューで始めてアマゴを掛けた竿でもあるが、
餌竿を新調してから、胴調子でテンカラに好都合だたので使っていたが、
オイラの不注意で、引退せざるを得なくなってしまった。
何だかとっても残念である。
テンカラ竿を新調しても、このテンカラ仕様の餌竿は取って置こうかと思う。