渓で手足に七つの傷を持つ男

●●今回の仲間の皆さん●●

【年月日】2001年7月某日(一泊二日)
【気 温】下界は体温と一緒℃
【水 温】未計測
【同行者】渓声会:8名

 この釣行はオイラにとって今までになく事前に綿密な計画のものに行われた。 インターネットというのはスゴイ!「一緒に釣りに行きましょう!」から 「誰それが何の道具持ってきてね〜」というのが一度に全員が見ることができる。 約2ヶ月に渡るインターネット会議を経て、この日の明け方、総勢8名が 車止めに集まった。とりあえずビールで乾杯!
 往路は下りのみでテン場まで一直線に下る。今回渓泊まり初登場の まっちゃんは徹夜のドライブと 10`程度の酒&ビールを担いで ボッカ役のため、下りの途中でダウン・・・休みながらの山道下りで3時間掛けてようやく テン場に到着。釣り人もかなり来ているらしく、段丘になった砂利場には、 ご丁寧にきちんとブルーシートを張れるように倒木の支柱が立っている。 何とハンガーやSフックまであるが、ゴミだらけなのが気分が悪い。 ガスカートリッジからビールの空き缶、コンビニおにぎりのパッケージまで、枚挙にいとまがない。
 文句を言いつつも、最高のテン場が 完成し、支流の多いこの渓の上流、下流、支流に8名の渓師が2人組×4で、 晩飯のオカズを探しに、旅立っていく。

写真:これがこの渓のアマゴである!

 オイラはmalmaさんとペアで北側の渓に入る。 ここ数日、快晴続きであったが、昨夜は雷が光っていたので、一雨あったと思う。 渓底の石はチョットだけ洗われてコケが流れている。水が動いた証拠なので、あわよくば・・・ という期待がよぎる。
 出た!
8寸のアマゴである。体高があって、尾鰭はピンピンで、うっすらと緑がかっている・・・ でも、オカズにするにはチョット幼いので、暫し見とれた後リリース。
その後、アマゴ、イワナ織り交ぜて、思ったより豊かな渓より辺りが続くが、型は今一つである。

写真:似非ヤマトイワナ

 アマゴとイワナの混棲域なので、比較的大きな釜からは立派なアマゴが、 小さな落ち込みの岩の下からはイワナが出てくる。どうしたことか、 毛針には一向に反応がない。エサは いつもと同じカワムシであるが、 相変わらずキンパク丼状態である。 malmaさんはミミズとブドウムシの両方で魚信を拾っている。
 イワナパーマークが綺麗に残ったこの渓独特のイワナ!かと思いきや、 どうも様子がおかしい・・・ 体側に白い斑点がいくつか散りばめられているのである!

写真:胸鰭上部まで到達している虫食い模様

 写真では非常に見にくいのであるが、ヤマトイワナは本来、 体高の頂点に虫食い模様はない。綺麗なパーマークと あったとしてもオレンジ色の斑点があるくらいである。 しかし、このイワナに限らず、オイラ達が見た個体は、白い斑点に背中の虫食い模様が あからさまに顕著であった!malmaさんと二人で ハイブリット・ヤマトと名付けた。
 しかし、名付けていい気になっている場合ではない!何でこの渓に、本来 ニッコウ系はいるはずがないのに、ハイブリット種がいるのか!! 心ない釣り師の強欲の結果だと思うのだが、 逆に、こんな所までわざわざ放流しに来るのも全くご苦労なことである。

 などと言っているうちに、納竿時間となる。
晩飯用を二人で合わせて数本キープし、テン場に戻ると、既に皆さんお帰りで、 往路であれだけ苦労したまっちゃんの9寸ヤマトを筆頭に、 マス顔をしたアマゴなどが並んでいる。盛大な宴会である。
 一人一品のオカズorツマミを用意してきたこともあり、 何と豪華な夕餉であろうか!という感じである。今回、風邪を引いて体調が芳しくない かいちょ=だんちょ焼酎の渓水割りを煽りながら作った、 豚ロースのマスタードソース煮はビールのツマミに最高! おがちゃん&川崎さんイワナの漬けは山道の途中で山山葵を採り、 持参の海苔を散らしていただいたのであるがこれが絶品! 酒が進む、進む!

写真:快適極まりないテン場

 uruwatsuさんは焚き火の横で、 一生懸命塩焼きの面倒を見てくれている。
時間は何とまだ4時半。オテントウさんもまだ稜線の上にハッキリと見える。 この時間から、渓のせせらぎを横に、ビールを煽れるというのは何という幸せだろう! 今回も懲りずにオイラは藤枝の銘酒 喜久酔(今回は“特別本醸造”)を 「なっちゃん」のペットボトルに入れて持参。いつの間にか、川崎さんと二人で酒を煽っている。 しかし、川崎さんは強い!翌日も水の替わりに飲んでいるのである・・・
 そんなこんなで多分オイラは8:00前にはシュラフに入って熟睡だった。 だが、まさかこの時、渓史上最悪の事態が自分の体に襲いかかってきていることなど知る由もない。

写真:翌朝のテン場の様子

 昨夜、早く寝過ぎたこともあって、朝は早い。AM3:30には起床(って早過ぎる!)。 早速焚き火の下火を入れる・・・AM4:00くらいになると、 山際がだんだんと白けてくる。 この瞬間に、渓水に冷えているビールを開ける。 ウ、ウッウマイ!!!
 朝飯はラーメン!その隙に昨日、まっちゃんが炊いてくれた マイタケ&エノキ炊き込みご飯をオムスビにしておく。
 テン場を撤収し、山道の取り付きまで荷物を運び、パーティーに分かれ、 渓魚を目指す。malmaさんは昨日のお酒が残ったらしく、テントで静養している。
コージさん、おがちゃん、uruwatsuさんは上流部へ、川崎さんは下流部へ、 かいちょ&まっちゃんは休憩しながら、写真撮りながら・・・オイラは一つ東の渓へ・・・ コージさん達は時間いっぱいまで滝水シャワーダイブと9寸ヤマトで名残を惜しみ、 川崎さんは6本のヤマトとご対面、オイラは9寸アマゴと別れの挨拶を交わし、 山道に取り付く。
 標高約600bを直登するような角度で上っていく山道は やはり結構キツイ。沢筋で涼風が吹くところはイイが、植林帯にはいると、 ムッとした空気に包まれ、足の進みものろくなる。山道を登りきり、 林道に出たら「終わったぁぁ」 と叫んだのも束の間、林道のダラダラ歩きの40分が一番疲れた。 沿道を飾るタラの木と野いちごが辛うじて疲れを癒やしてくれた・・・
 コージさんとまっちゃんは林道ゲートより、タクシーに乗ってご帰還! VIP待遇である。

写真:ここはやっぱり楽園である

 こうして、我々の1泊2日は終わった・・・
渓水を踏みしめ、上流に足を運ぶと足元から 魚影が走る。その魚影に木漏れ日が反射し、キラッ、キラッと宝石のように輝く。 これを楽園と言わず、何と言おう!  初めての渓泊まりの釣り師、遠路はるばる車を飛ばして集まった釣り師、 ヤマトイワナとの初対面を夢見ていた釣り師・・・ 様々な釣り師の夢を一つ残らず叶えてくれたこの渓は 本当に豊かである。 
 渇水気味にも係わらず、前日のちょっとした雨で魚が踊り、森が緑を取り戻した気がする。 決して優しい釣行ではなかったが、また来てみたい と後ろ髪を引かせるには十分過ぎるほどの魅力でした。

 が、その代償は余りにも大きかった・・・
遠方から来た皆さんはヒル対策として、 例外なくパンティーストッキング2枚履きで万全を期したのであるが、 結局ヒルは仮想的にしか過ぎなかった。本当の天敵は、 ブヨ(orダニ)であった。
宴会の最中、寝ている間に、アルコールを飲んだ後の炭酸ガスの蒸散も手伝い、 彼らを自分たちの体にお誘い申し上げてしまったらしく、特に、 コージさんの左腕、川崎さんの首筋、オイラの足首には 七つの傷がそれぞれくっきりと残っていた (実際には7つどころではなく、10数カ所〜20数カ所に及ぶ)・・・・・・

 帰りには川根温泉:ふれあいの泉 で湯船に浸かり、歓楽的麦ジュースでリフレッシュしたのでした。 『首都高速渋滞ウン十`』なんて聞いてしまうと、気の毒で申し訳なくなってしまう。

   今回の渓泊まり釣行は、こうしたメンバーでの第一歩に過ぎない!
今日を皮切りに日本全国の美渓を熱いハートと大量のアルコールをもって、 訪れたいものである。


魚の独り言

8人で来て、みんな遊んで帰ったな。テン場掃除していったから許してやるよ!

Fishing Indexへ inserted by FC2 system